<アンケートの目的>
プラスエムでは、2019年5月下旬から6月下旬にかけて、「企業・団体による教育支援活動に関する教員対象アンケート調査」を実施いたしました。この調査は、企業・団体等が実施している学校教育への支援活動の受け入れ状況と学校現場の認識等についての傾向を把握し、今後の事業展開に反映させることを目的に実施したものです。プラスエムでは、同調査を2014年にも実施しており、傾向の変化を把握することも目的の一つとしました。
<調査の概要>
○調査対象 全国の小学校・中学校・高校の教員
○調査方法 プラスエムと関わりのある先生を中心にアンケート用紙を持参・郵送・メール送信
○調査期間 2019年5月末~6月末
○回答者数 104名(調査依頼数は約200名)
<調査結果>
Q1.回答者の学校区分と職位
全体の回答数は104件で、学校段階別では小学校45校、中学校31校、高校23校、中等教育学校他5校。
回答者の職位としては、「教諭」(52人)が最も多く、以下、「副校長・教頭」(26人)、「主幹教諭」(24人)等。
Q2.外部機関による学校教育支援活動で受け入れたことがあるもの(2018年度・2019年度)
「コンクール・コンテストへの参加」が最も多く(78校)、以下「講師派遣による出張授業」を受け入れたことがある学校(73校)、「各種副教材の活用」(41校)、「施設見学」(30校)等となっています。
学校段階別にみると、小学校では「講師派遣による出張授業」と「コンクール・コンテストへの参加」 を、中学校と高校では「職場体験・インターンシップ」を受け入れた学校が比較的多くなっています。
「その他」では大学生チューター派遣、漁師体験、オリパラ教育、電池教室、福祉体験など。
Q3-1.企業・業界団体が行う「出張授業」の受け入れ状況(2018年度・2019年度)
回答のあった学校の73%で企業・業界団体が行う出張授業を受け入れており、特に小学校でその割合が高くなっています。
Q3-2.出張授業のテーマとしては、「環境教育」が最も多く(73校)、以下、「キャリア教育」(59校)、「エネルギー教育」(32校)、「健康教育」(28校)等となっています。学校段階別にみると、小学校では「環境教育」が、高校では「キャリア教育」の割合が比較的多くなっています。その他のテーマとして挙げられたのは、福祉、地域の伝統・文化、国際理解、科学技術、人間と社会、キャリアセミナー、伝統文化、税について、文化(狂言)、ストック、SDGsなどでした。
出張授業を実施した時間・教科としては、「総合的な学習の時間」を利用するケースが各学校段階を通じて最も多くなっています(88校)。ほか、保健体育(27校)、理科(31校)など。
「その他」では、部活動、道徳の時間、人間と社会、図工、LHR、土曜授業など。
Q3-3.企業・業界団体が行う「出張授業」に対する評価
これまでに受け入れた企業・業界団体が行う出張授業を「今後も受け入れたい」と評価している学校は90校であり、86%となっています。
Q3-4.5.一方、企業・業界団体が行う出張授業を「受け入れたくない、受け入れるつもりはない」学校(14校)にその理由を聞いたところ、「授業時数に余裕がない」が75%と最も多く、続いて「テーマが年間指導計画に合っていない」が46%であり、「特定の企業・団体との連携に抵抗がある」を挙げた学校は14%と少数でした。
Q4-1.企業・業界団体が行う「児童・生徒向けコンクール」に対する認識
企業・業界団体が行う「児童・生徒向けコンクール」に関する情報の周知方法としては、「積極的に奨励している」学校が最も多く69校、「届いたコンクール情報を精選して周知する」学校が65校、「届いたコンクール情報を全て周知」する学校は比較的少なく12%でした。
Q4-2.コンクールを「積極的に奨励していない」学校に、その理由を尋ねたところ、「時間的余裕がない」が7校と最も多い回答でした。
Q4-3.コンクールを児童・生徒に薦める際に重視するポイント
コンクールを児童・生徒に薦める際に重視するポイントとしては「賞品・参加賞の有無」を挙げる学校が90校と圧倒的に多い結果になりました。学校段階別にみると、「賞品・参加賞の有無」は特に小学校で多いことがわかりました。続いて「教育方針との整合性」を挙げる学校が48校でした。
Q5.企業・業界団体が行う教育支援活動を学校で効果的に活用するためのポイント
「学校・企業の双方に精通した専門コーディネーターによる調整を挙げる学校が最も多く(71校)、以下、「宣伝色を出さないよう事前の打ち合わせによる合意」49校、「年間指導計画における位置づけの明確化」が35校、「支援内容・特色等に関するわかりやすい情報提供」(30校)等となっています。
学校段階別にみると、「学校・企業の双方に精通した専門コーディネーターによる調整」は全校種で多く、特に高校で「支援内容・特色等に関するわかりやすい情報提供」と「宣伝色を出さないよう事前の打ち合わせによる合意」が多くありました。
Q6 自由記述
・企業団体による教育支援活動は今後ますますニーズが高まります。例えば様々な企業で取り組むSDGsの内容は総合的な探究の時間で、扱いたいもののひとつです。
・作品募集には積極的に参加したいと考えていますが、夏休みや冬休み前に締切りになるものがあります。子どもたちにチャレンジさせるには夏休みや冬休みがいちばん良いように思います。
・企業団体に、講師派遣授業に協力してもらいたいのですが、本校の条件に合うものがなかなか見つからない。企業団体本位ではなく、学校本位に考えてもらえると助かります。
・教員はいつも忙しいので、講師派遣授業は大歓迎だが、教員の負担にならないよう運営に工夫していただきたい(※校長)
・いつも良い情報、良い教材などをご提供いただきありがとうございます。講師派遣授業について、テーマ別に外部講師一覧のようなものがあればよいと思います。
・企業団体による教育支援活動の上手な受け入れについて、教員向けの研修会やセミナーなどを開催できないか。たくさんの先生方が集まると思う。
・コンクールでは、参加賞があるものを児童に薦めます。“○○がもらえるよ”という呼びかけがいちばん効果的です。それと賞の数が多く、入賞のチャンスが多そうなものを要望します。
・健康教育や防災教育に関する教育支援をしていただけたらありがたい。
・副教材を編集する際、または出前授業のプログラム作りの際には、学習指導要領の内容を踏まえるようにしてもらいたい。また現場の教員の意見をリサーチすれば、より使いやすいものができると思う。
・学校が企業団体からの講師派遣に期待することは、「子どもたちに、多面的・多角的な見方や考え方を身に着けさせたい」というところにあります。その意味でも、子どもたちの心を揺さぶるような、リアルな体験などを伝えてほしいと思います。
・出張授業では、教師ではできない実社会で働く人の声を伝えてほしいとお願いしています。学校での勉強・活動と実際の仕事のつながりや、海外赴任体験など、自分の今が未来につながることを意識させるようなお話を聞けるのは、大変貴重な機会だと感じています。
・ポートフォリオ作成にあたり、興味のあるコンテストに主体的に取り組むよう指導しています。
< 総 括 >
5年ぶりの調査でしたが、協力してくれた先生は104人でした。小学校・中学校・高校とバランスも取れていました。人数が増えた分、5年前とはかなり違う結果が出るかも知れないと予測しましたが、基本的には同じ傾向でした。
プラスエムが実施する調査では、ふだんからプラスエムと関わりの深い先生方(ネットワークの先生方)に偏る傾向があるので、そのせいかもしれません。しかし、プラスエムと関わりの深い先生方は、ふだんから企業団体の教育支援について関心をお持ちであり、“やる気のある”先生方と言い換えることができます。そのため、調査結果から、“やる気のある”先生方の意識はどのようなものなのかを窺い知ることができます。
教育支援活動については、教育コーディネーターのニーズが、5年前に比べてますます大きくなっていることがわかります。これは、文部科学省・教育委員会でも喫緊の課題となっている「教員の労働時間の短縮」に関わりがあるようです。
先生方の働き過ぎは今や“社会問題”とも言えますが、企業団体の教育支援が、それを助長することがあってはなりません。そこで注目されるのが、先生方の負担軽減に寄与する教育コーディネーターの役割というわけです。プラスエムの責任がますます重くなります。
この調査結果を分析し、また機会あるごとに現場の先生方のご意見をお聞きしながら、学校を通しての教育支援を計画する企業団体のお手伝いができればと考えます。